父の願い≪林 和枝(娘)様≫
父は戦争経験者でした。戦地では大変な苦労をし復員しました。戦地での体験が根底にあり戦友が何人も亡くなり、父も撃たれ一年近く入院をする大けがを負いながら助かった命、死んだら誰かを助けたいと強い気持ちを持っていました。
「死んだら献眼する。目の見えない人が少しでも見えるようになればいい。」と何十年も前からアイバンクに登録しているからと口にしていました。常に冷蔵庫には登録カードが貼ってありました。
令和2年12月、99歳とはいえ父との別れが来るとは思ってもいませんでした。父の願いの献眼、一度は電話したのですが決断がつかずお断りをしました。電話を切った後、父が前から言い続けていた献眼、父の望みを叶えたほうが父は喜ぶのではないだろうかと思い直し献眼を申し出ました。兵庫アイバンクの渡邉さんに「年齢は関係ないです。」と言って頂きお願いしました。
後に父が折に触れ私宛に手紙を書いていたのでしょう。20通以上未開封のままありました。どの手紙にも、自分にもしもの時があれば必ずアイバンクに電話して献眼するようにと書いてあり、電話番号が書いてありました。「良かった。」もしあの時断っていたら父に申し訳ないことをするところでした。
数日後2人の方に角膜移植ができたと渡邉さんから連絡を頂き父の強い願いが役に立てて父は喜んでいることでしょう。
27年前母が亡くなり、昔人間で家の事は全くできなかったのですが、父に買い物の仕方(かごを持ってレジに並ぶ)とか。洗濯等々家事を練習した事を先日の事のように思い出します。初めてレンジでチンした時の驚いた様子は今も鮮明に残っています。99歳まで自分の事は自分でし、誰にも迷惑をかけず、そして死んでからも人様のお役に立つ献眼をして素晴らしい父でした。娘が言うのもおかしいですが自慢の父でした。