皆さまからのお便り letters

ドナー様、ご家族様、縁者の皆様へ≪匿名希望者≫

 ドナー様から大切な角膜を頂いて一年あまりが経ちました。すぐにお礼のお手紙をと思っておりましたが、事情がございまして今日になってしまいました。申し訳ございません。

 私事を失礼申し上げます。私、突然の眼の病気に侵されまして、医師の方から角膜移植に恵まれれば、その恩恵に預りなさいと導かれ、その機会を待っておりました。そして昨年、ドナー様がかけがえのない角膜を提供してくださり、移植を受ける機会を賜ることになりました。

 ドナー様を亡くされたご家族様、ご縁者様の深い悲しみのなか、私は手術を受けていたのだと存じます。ドナー様とご家族様、ご縁者様の強いご意思と深いご理解のもとに、私は好運にもありがたく救われたのでした。

 術後に、部屋の壁が見え、時計が見え、鏡で自分の顔が見えまして、大切な角膜を頂いたありがたさがこみ上げると同時に、ドナー様、ご家族様、ご縁者様が大変なご決断をされたことに気づかされ、感謝と敬意の気持ちに満ち溢れました。

そのありがたさを、十分な言葉で表すことができなく、大変申し訳ないと思っております。

 頂いたドナー様の角膜を通しまして、四月には桜の花が、五月には飛ぶ蝶がはっきりと見えるようになりました。

 ドナー様の御温顔を知る由もございませんが、その崇高なお志に敬意と感謝の気持ちを明確にしつつ、毎朝、欠かさず西のほうを向きまして敬礼しますとともに手を合わせております。ドナー様と皆様への感謝と敬意を、私は一生忘れることはありません。誠にありがとうございました。心から厚くお礼申し上げ、深く感謝申し上げます。

かけがえのない角膜をいただいた者 拝